めろん☆戦争(2006.7.5) 部活帰り。夕陽の影の中で、幼馴染みの双葉が立ち尽くしていた。ちなみに、位置は俺の家の門の前。制服のまま帰りを待っていたらしい。 手に、何やら赤っぽいサッカーボールほどの物を抱えて、奴はしょげたように俯いている。 「おい双葉。何やってんだ?」 「……いっちゃん。私はもうダメなの。制覇出来なかったわ」 「何が?」 泣きそうな声で小難しいことを言いやがる。さらに双葉は続けた。 「この迷宮を越えられなかったら、私は手出しをしないと約束したの。この子との約束よ。この勝負に勝てたら、私はこの子を……。でも、超えることは出来なかったわ。複雑に絡み合った、相手を惑わせるラビリンスに囚われて、とうとう完全制覇は叶わなかったの。自然が作り出した迷宮は思った以上に手強かったのよ。だから、いっちゃん……」 ごちゃごちゃと言いながら、双葉は赤っぽいそれを俺に差し出す。祈るような目。受け取らない訳にはいかなかった。 夕陽に照らされた双葉の口調は、諦めたようなものだった。しかし、それは負けを認めた者の潔いものでもあった。 一体何を制覇出来なかったんだ? 何をどうしたかったんだ? 「いっちゃん、もはや資格をなくした私の代わりに、この子を美味しく食べてあげてね。……さようならっおやつのめろんっ!」 涙を流す幻覚と共に、双葉は走り去っていった。呆然と数秒を過ごし、俺の手に残されたそれ、真っ赤なメロンに目を落とす。 メロンの頭にS、真反対にはGと赤ペンで書かれていた。 つまり、双葉はメロンの皮にある網目を迷路だと信じ、スタートからゴールまで赤線で繋ごうとしたのだ。そう、奴は繋がったら食べると植物に誓った。 ……世間ではこういう奴を馬鹿と呼ぶが、言うと双葉はショックで三日間寝込むので言わない。むしろ実証済みなので言えない。 ☆ 本日の試合結果。めろん勝利。 -レッツ☆ウォーtop- |